男はつらいよ、が苦手な人がいるのはなぜだろう

今でこそ男はつらいよのファンとして生きているけれど、かつては苦手だった頃がある。三十代前半ぐらいまでは、どちらかと言えばみたくなかったし、むしろバカにしていたかもしれない。同じ匂いをフジテレビの名ドラマ、北の国からにも感じていて、あの番組も見なかった。

物語の展開があまりにもありきたりだから。わざとらしいセリフが苦手なのだから。わざわざ事をあらだてるシーンがいやだから。寅さんみたいな人、いないから。

色々と思いつくけれど、寅さんの事を荒立てていく迷惑な言動がみていられない、そんなことしないでほしい、という気持ちが先に立つのだろう、と思ったりもする。

寅さんは、人間の、特に男性のわがままな部分、人情味のある部分を過剰にもった人であって、実際のところ、寅さんのような人はそもそもいない。だから、そんな寅さんみたいな人なんていないよ、って思ってしまうのだろうか。

いつからだろう、あの映画を完全なフィクションとしてみる事ができるようになったのは。例えばハリーポッターを見ながら、ホウキで空なんか飛べないよ、バカバカしいなんて思う人がいないように、男をつらいよを完全なフィクションとして見て欲しいと思う。そういう意味では、寅さんは、魔法使いと同じなのだ。寅さんみたいな人がいたら面白いだろうな、寅さんみたいになれたら愉快だろうな、男はつらいよはそんな映画なのだと思う。