映画 - 二百三高地

久々に大作を見ました。二百三高地です。三時間以上あります。日露戦争を舞台に、乃木希典を主人公にして戦争にまつわる様々な側面を描いています。乃木大将の葛藤や哀しみ、自分の不甲斐なさ、孤独や軋轢、そういう全てが入っています。圧倒されるといえばその通りですが、ちょっと詰め込み過ぎな感じでもあります。また、小賀武志中尉が次第に戦争によって人間性を失っていく姿も、身につまされます。もし自分がこの時代に生まれていたら、きっとこの何万人もの兵隊さんの死の1つで終わったんだろうなあ、と思うと平和を保つ努力がいかに大切か、と思わずにはいられません。こういう言い方は誤解を招くかもしれませんが、この映画では、兵隊さんが虫けらのように大量に、どんどん死んでいきます。ほとんど死んでいくシーンばかりです。しかも一度に大量に。このエキストラを用意するだけでも大変だったろうなぁ、と思います。おそらく、何度もに死んだ役をするエキストラが沢山いたにちがいありません。

それはそうとして、丹波哲郎さん扮する児玉源太郎がはまり役。乃木将軍も、仲代哲也さんがはまり役です。そういう風にしか見えないということから、この二人は名優ということがよくわかります。他にも、夏目雅子さん、伊藤博文役の森繁久弥さん、明治天皇役の三船敏郎さん、などなど大物ばかりが登場します。役も大物ばかりですね。

一方で、メッセージ性があり過ぎて、ちょっと濃いな、という印象もあります。元気がない時は見ない方がいいでしょう。この映画が作成されたのは、日本がバブルで浮かれていた時代でもあります。バブルぐらいの元気がないと、この映画は作れないよなぁ、と思いますし、見る方もそうだと思います。全体的に過剰な印象を受けるのです。また、さだまさしさんの歌う歌詞が、黄色い字でアップで表示されるのは、どうかなぁ、と思います。歌は歌だけで勝負したほうが良かったように思います。何度も「愛は死にますか」等々の歌詞を大画面で見せられて困りました。

 

司馬遼太郎氏の坂上の雲も同じテーマを扱っていますから、こちらも読んでおくと、何倍も楽しめる映画だと思います。坂上の雲では、乃木将軍がとった戦術等にフォーカスして乃木将軍に対して辛めに描いていますが、こちらの映画は乃木将軍が子供を戦争を失った時の様子、明治天皇の前で泣き崩れる様子、児玉源太郎とのサシでの会議なども描いてあって、仕事の出来不出来よりもその人そのものを描いています。そういう意味では、こちらの映画のほうが、より反戦のメッセージが強く出ていると思います。坂上の雲は少し筆が滑っていて、時々戦争讃歌みたいな印象を受ける時がありますよね、それはそれで小説の面白いところではありますが。

 


日本映画『二百三高地』(1980) 予告篇